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腰痛の症例

60代 男性

主訴:腰痛

【症状】

8月の初旬に腰痛がひどくなりゆっくりな動きでないと腰をまっすぐにすることができない。

左側の腰の筋肉が右側よりも盛り上がりが著しい。

整形に通っているがなかなか改善が難しい様子。

一生この痛みのままなのかと心労を覚えるほど。

【初診】

所見:左の腰部(腎兪)に著しい筋肉の膨隆を確認。体格が細い。

検査:前屈・後屈ともに痛みが出現。どちらかといえば後屈の方が痛みが強い。

切診(触診):局所の筋緊張が著しい。少陰腎経の弱り強く。太陽膀胱経の左側の冷えが著しい。小腹が柔らかく力が無い。また冷えが著しい。

脈診:沈・緊・弱

​舌診:やや青みがかり血色が良くない。薄い白苔

治療方針:下焦(下肢)の冷えが強く、身体の温煦作用が低下している。

腰痛は冷えが停滞しているために起こっているものだと推察したため、下焦(下肢)を温める経穴(ツボ)を選択。鍼よりもお灸を中心とした治療を行う。

治療後:左の局所の筋肉の膨隆がおさまり、痛みがだいぶ楽になったと伺う。

自宅での養生:夏と言えども、エアコンや冷たいもので身体の外や中を冷やす要因があること、バイクで風に当たり患部が冷える可能性があることをお伝えし、気を付けてもらう。

【2診目】

痛みがだいぶ無くなり次の日に銭湯へ入れるくらいになったそうです。ただ電気風呂で腰に電気を当てると身体がだるくなり痛みが戻ってきた。

考察:痛みが取れたとはいえ、筋組織は回復する段階にあるため強い刺激は、この患者さんの場合は禁忌です。身体の生理的な回復を待たずに強い刺激によって負担をかけると悪化することをお伝えした。前回の四診からも身体の弱りは強いためそのことは明らかである。

 

治療方針

身体の深部の冷えが再度出現していたので、お灸を中心とした温補の治療を施して治療は終了。治療後は、腰部の痛みと腫れは引いていた。

自宅での養生:痛みが取れてもすぐには強い刺激を入れないこと。冷えを取るツボにお灸をしてもらう。

​【予後】

4診目以降は全く痛みを感じずに元の生活を過ごせているとお電話がありました。

長い期間痛みに耐える生活を送るという事は、本当に辛かったそうです。

今回はたまたまインターネットで当院を知って来院をされたそうです。

治療の方は、ご年齢と身体の弱りを整合して考えると少しかかるかなと思いましたが、患者さんの日ごろの養生をしていただいたぶん治りが早かったように思えます。

​お役に立てて良かったです。

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膝関節痛の症例

90代 女性

主訴:右膝の関節痛

【症状】

明け方に右の膝が痛む

【四診】

所見:膝の形が変形している(変形性膝関節症)

​切診(触診):血海が凹んでいる 大腿四頭筋が瘦せている 筋肉にほど良い張りが無い

脈診:沈・弦・濇 右の寸口が沈んで強い 左の関上が虚

舌診:胖舌、舌体の左右の血色が悪い、裂紋あり

治療方針:肝血の不足が覗え、さらにその虚熱が肺経に届き実を呈していると判断。肝虚肺経実熱証と証を立てて治療を行う。肺経の実熱を瀉法し、肝血を補う治療を施しました。

治療後:関節周りの筋肉が柔らかくなり、ある程度張りが出て来た。ご本人様から身体全体の緊張が緩んで痛まなくなったと感想をいただきました。

【考察】

膝関節の治療は、様々あるのですが。この方の場合は、まずは筋肉の中の炎症を取り除くために肺経に停滞している実熱を先に取り除き、不足した肝血を補うことで筋肉を栄養させるのがベストな治療でした。

東洋医学では、筋肉は血液を貯蔵する器官でもあることを古典に記載されています。ただ今回の場合、ただ肝血を補うだけでは、筋肉の痛みやほど良いふくらみは出てきません。先に炎症の元になっている実熱を取り除くことで、後の補血の治療が生きてくる症例でした。

子供のチック症例

小学1年生 男の子

主訴:イライラした時に首を振る

【症状】

気持ちがイライラした時に首を振るクセがあるとお母様からの証言。

小学校に通う時も不安感で泣いてしまい、送りが必要の事。

【四診】

所見:こめかみに青筋が出ている。親しく話しかけてくれる

切診(触診):背中の肝兪に左右差(虚が強い) 左の心兪が張っている

脈診:小さくて分かりずらいが、左の関上が虚のように感じる

舌診:やや先が赤い

治療方針:治療の決め手は、背部兪穴の虚が著しいのと、舌の先が赤く左の心兪が張っていること。肝虚上焦熱で証を立てて治療を行いました。

治療後:肝兪の左右差が無くなり、心兪の張りが取れた。お母様から首を振るチック様の症状が最近出なくなったとお話しがあった。

【考察】

肝の虚とは、いわゆる「血液」の不足を指します。東洋医学では、血液の働きは精神の安定性を担っている面があるので、肝血が不足し感情の発露が上手に起きていなかったのだと推察します。血液の不足を起こす要因は、肉体的な疲労と精神的な疲労にあります。

​子供時代は意外に幼稚園や小学校でイベントが盛んだったりするので、それで疲れが出るのも可能性としてはあるのではないかと思います。特に卒園や入学などの練習や環境変化の際にこういった症状が現れやすいと感じます。

​足首の関節炎の症例

80代 男性

主訴:右の足首の関節(内側)が腫れて熱感と刺すような痛みがある

【症状】立ち上がると足首の内側が激しく痛む、体重を乗せて歩きづらいために引きずりながら歩く

【四診】

所見:右の足首の関節に強い腫れと熱感。炎症により赤みを帯びている。関節の変形が強い。

​切診(触診:腫れている部分を触るとゴムの様に弾力がある(脾経・腎経)

右の足首は炎症のため熱感があるが、左の足首から指先までは冷たくなっている。

熱感は、胃経を中心に内側に広がっている。

下肢の内側の筋肉が痩せて細くなっている。

脈診:大・洪 右の関上、尺中の脈が浮沈共に強い。 左の尺中は沈めて有力。

舌診:無苔、絳舌、裂紋舌

治療方針:もともと湿熱による五十肩で来院されていた方で、五十肩の症状は完治していました。

ただお酒や脂っこいものを食される傾向があるため、

新たに湿熱が発生し、更に胃腸に痰飲が停滞している状態を確認。

​脈や触診により湿熱が胃経から脾経・腎経と下向きに移っていることが分かる。

痰飲とは、粘着質な体液のことで、

いわゆる汗や大小便で本来体外に排出されるべき代謝物が溜まってしまうものです。

痰飲とは、湿(むくみの原因となる余分な水分)から形態が変化したもので、

東洋医学の医学書には、「湿は関節を犯す」と記載があります。

簡単に言いますと、「関節の周りが浮腫んでいたら関節が変形するという事です。」

治療方針は、関節に留まっている強烈な熱と痰飲を捌くこと同時に行うことです。

三焦経の通りを良くし胃経の実熱の影響を避けるため、水穴を補法。

胃経の強烈な実熱は、火穴を瀉法。

また更なる炎症を生じさせないように気をつけながら治療をさせていただきました。

治療後:目に見えて足首の腫れが納まり、炎症による熱感が引きました。

足をついても痛みが7割消失したそうです。

【考察】

脈が洪・大と非常に強い脈を打っていたので、虚実が分かりにくかったのですが、胃経の反応から察すると右の関上が浮かせて実、右の尺中が浮かせて虚であると推察。左の尺中が有力なのは、胃経の実熱が波及したものだろうと思います。

比較的早期に来院いただいた事と、治療後の炎症や腫れの引き具合から、治療期間は短くて済むだろうと感じます。早期の治療は予後の良し悪しを決定してくれます。

足首の炎症の範囲が広いため、痛みが7割消失したといっても関節周りの軟部組織が炎症により堅く変性しているため、軟骨の様なゴリゴリが残っていました。

これは、先ほど言った痰飲の影響なので、未だ痰飲がある証拠です。痰飲とは、代謝物なのでこれが完全に取れれば完治できます。

ただ、ここで脂っこいものやお酒、味が濃いものを飲食されてしまうと更に痰飲が生じて、炎症や腫れがぶり返す可能性があるため、控えていただくように言及させてもらいました。

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治療前の右足

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治療後の右足

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